***

私と出会うまで柚花の秘部に触れたことのある男性はいなかった。
だから私が初めての男になる。
そして本来であれば、それは今でも私だけでなければならないのだが、不幸にも痴漢から辱しめを“受けてしまった”柚花は、始めは下着の上から、そして2度目は膣の中に直接指の侵入を許してしまった。
でもそれは痴漢の男の意思によるものであり、柚花はあくまで被害者となる──例えそれがスリルを求めた結果であっても。

しかし今回は……
今、柚花は自分の意思で男性の手首を掴んでいる。
決して動くことの無い男性の手のひらの上に自ら跨がっている。
まだ男性の手のひらは柚花の身体に触れてはいない。
それに、たとえ薄くても男性の手はハンカチに覆われているのだから厳密には触られる事にはならない。

…………そう思い込もうとしても、スマホに映る試着室の中の現実が私の想いを否定する。
あんな薄いハンカチでは、柚花の割れ目の形も、固く勃起した陰核の膨らみも、そしてヌメる粘液を滴らせる膣の入り口まで、指でなぞる男性の脳裏にはくっきりとその形がイメージされてしまう。

それをわかっていながら柚花は自らの意思で欲望を満たすため、そして私を嫉妬で狂わせるため自分の身体を捧げようとしていた。


“ガタッ!”

カウンタードアのスキマから見える柚花の足が小さく跳ねた。
スマホに映る試着室の光景も一瞬ブレる。

柚花が男性の手首を持ち上げ、ハンカチに包まれた手のひらを自分の秘部に押しあてる。
触れられただけでビクンと跳ねてしまう身体。
でも、たぶん逝きはしていない。
それでも柚花が自らの意思で男性に自分の秘部を触らせた事は間違いない。
再びスマホに映し出された現実では、男性の手首から先が柚花の股下に隠れ見えなくなっていた。

「はぅ…………ふぅ……あの……ちゃんと拭けるように……手のひらを…………特に指先を……その……もっと押し付けて……もらえますか?」

「あ、はい。こ、こうですか?」

「んんっ…………ぁぁ……ありがとうございます。
それでは私が手首を手前に引くので、その……濡れてる所を拭いて下さいね」

手首から先が見えなくなるほど男性の手は柚花の股下に差し込まれていた。
だから男性の指先はだいぶ奥。
そこから指先に力を入れて濡れた箇所を拭いて欲しいらしい。
でもそんなことをすれば……

まず今の時点で既に男性の指先は触れているのではないか?
私でさえ触ることを許されない柚花のお尻の穴に。
本来性器ではないそこは、まだ私も意識をしていなかった未知の世界。
純粋な恥ずかしさで言ったら秘部よりも精神的に抵抗があるはず。
だから普段であれば、柚花の身体は反射的に拒絶反応を示すだろう。
常識的にそこは排出するための器官でしかないのだから。

でも今の状況であれば新たな感覚が芽生えてしまってもおかしくない。
現に柚花は触れてしまうことを知りながらも男性に指先を押し付けるようお願いをしている。
私の目の前で見知らぬ複数の男性に視姦されながら秘部に男性の手を押し付けている。
そんな異常な状況であれば──いや、だからこそ嫌悪を抱くはずの感覚が性的な興奮へと変わってしまう。
しかもそれを柚花に覚えさせたのは私ではない。
何処の誰かもわからない男性に柚花は未知の世界の扉を開けられようとしていた。


◇◇◇

<きゃっ! そこは……>

ハルくんが視線の先にいる。
試着室の中の私を心配そうに見守っている。

だから私は……試着室の前でしゃがむ男の人に喜んで欲しいと思ってしまった。
それがハルくんの悦びにも繋がるから。

でも──いつもの事だけど──私は少しやり過ぎてしまったらしい。

少しでも形が伝わればと渡されたハンカチを広げてしまい。
少しでもアソコを拭く時間が長くなればと男の人の手を跨ぐ様に私の股下のより奥に差し込んでしまった。
そして少しでも触っている実感を意識して欲しくて「もっと指先を押し付けて」とお願いまで。

結果、男の人の指先が届いている。
ハルくんでも滅多に触ることのないお尻の穴に。
そんなところは本来触るべき所では無いのにハンカチ越しに触れられている。

心に芽生える未知の感覚。
それが性的な刺激なのかはわからない。
でもそれは間違いなく私の身体を貫いていた。

<どうしよう……>

ここまで来て迷いが生じてしまう。
お尻の穴に触れてしまうほど奥へと差し込んだ男の人の手を引き抜けば、その手がアソコを拭く分だけ私の身体を強烈な快楽が駆け巡る事になる。
当然そんなことになれば私の身体はいとも簡単に登り詰め、ハルくん以外の男の人の手によって逝かされてしまう。

そんな事は許されない。
私の身体はハルくんの「物」なんだから。

だから逝ってはダメ。
でも…………拭いてもらうのは?
だって、今も男の人の手はハンカチ越しとはいえ私のアソコに触れてるし。
跨がった手のひらを股下から引き抜くだけならいいのかな?
絶対に逝かないようにすれば……


恐る恐る私は男の人の手首を離し、その手を自分の股下に差し入れて男の人の手のひらに重ねてみる。
伝わるのは男性らしいごつごつした手のひら。
どちらかと言えば草食系の男性だけど、それでも触る手は大きく固い。

大きさの違う分だけ汗ばむ手の上を更に奥へと滑らすと、私の指先が男の人の中指の先に重なった。

そこで少しだけ指先に力を入れてみる。

「あ……」

驚愕でも喘ぎでも無いただの声が一音だけ漏れてしまう。

<これはヤバいぞ>

漏れ出た声に感情は乗らなかったけど私の心は様々な感情で荒れ狂っている。
恐怖、好奇、欲望、背徳。
だって男の人の中指を上から押したら、クポッと指先が私のお尻の穴に埋まってしまったから。

こんな許されない事を。
こんな許されない場所を。

まだお尻の穴の中に入ってはいないし、ただ指先が埋まっただけ。
それでも普通とは使い方が違うのに。
普通の人はこんなところに指を埋めたりしないのに。

またいけない遊びを知ってしまった。
これ以上は怖くて何も出来ないけど、私の知らない世界があるのを知ってしまった。

しかも……しかもだ!
ちょっと押しただけで指先が埋まってしまうのであれば、このままアソコを拭くために2人の手のひらを重ね、中指の先を押しつけながら手を引き抜いてしまうと…………
手前にあるもう一つの穴にも男の人の指先が埋まってしまう。
こっちは本当に入ってはいけない場所なのに。
そしてもっと進むと最後には穴ではなく、大きく膨らんでしまった突起が待ち受けている。
男の人は優しいからきっと上をなぞるだけ。
でも私が力を入れて男の人の指先を押し続けたら?

コリッとした感覚。
私のクリが男の人に潰させる。

そんなことをしてしまえば、たぶん私は腰から崩れ落ちてしまう。
強烈過ぎる刺激に耐えられず、逝くとかそういう問題ではなく狂ってしまいそう。

これまでとは違う種類の行為。
お尻の穴とかクリを潰すとか、何処かアブノーマルで恐怖を抱いてしまう。
しかもそれをハルくんの見てる前で。
痴漢のように受け身ではなく、自らの意思で男の人を導いている。

本当に怖い。
襲い来る快楽が。
狂ってしまいそうな自分が。

そして恐怖を抱く分だけドキドキしてる。
まだ知らない未知の世界に。
私が私でなくなるほどの快楽が待ち受ける世界に。

だから…………

互いの熱が籠った重なる手のひらをゆっくりと手前に引いた。
私を壊す男の人の指を上から押し付けながら。
これで私は……


………………


<むぅ~っ! 意気地なし!!>

これが彼の優しさなんだろうけど私は納得がいかない。
せっかく覚悟を決めたのに!
弱気な男の人は私に押さえ付けられながらも中指を横にズラし、私の入り口も固い突起も避けるように手を引き抜いてしまった。

<だったら私だって……>


◆◆◆

何故だろう。
試着室の中の柚花が可愛らしくぷぅっと頬を膨らませ怒っている。
たぶん思うように男性に拭いて貰えなかったのが理由なのだろうが、何があったかはスマホの画面からはわからない。

それでも私の精神はいつもながら壊滅的なダメージを受けていた。
その原因はスマホに映る男性のハンカチ。
柚花の股下をひと撫でした紺色のハンカチにベッタリと付くのは白濁した柚花の恥液。
柚花はただ滴を溢れさせていたのではなく、本気で興奮していた証を男性が持ち帰るであろうハンカチに付着させていた。

私が愛する人の秘密が。
私にしか許されていないはずの…………と思考の渦に沈もうとしていたのに感じる視線。
見れば柚花が未だ可愛らしく頬を膨らませたまま、いじける様に私を睨んでいた。

何故私がと理不尽な仕打ちを訴えようとしたが、私と目が合った途端に柚花は視線を落としてしまう。
見詰める先は試着室の中。
だから私もつられるようにスマホへと視線を移した。


「え、ま、待ってください」

スマホに映る光景とリンクし男性が焦りの声を挙げる。
その原因はもちろん柚花。
満足できない結末に、自らダブルアンコールでもするつもりなのか暴走を始めてしまう。

そんな柚花の暴走に男性が焦るのも無理はない。
私という存在が目の前にいながらこれ以上の事は許されないと思うのが当然だから。
でも残念ながら私の小悪魔は、逃げるタイミングを逃してしまえば気の済むまで離してはくれない。
柚花の恥液を拭き終わるも、柚花から終わりを告げられない男性は動けずに未だ固まったまま。
何故か不機嫌になってしまったカウンタードアの向こうの女性に焦りを感じ、試着室の中の手を引き戻そうとするが再び手首を掴まれてしまう。

理由はわからないが怒らせてしまったと顔を上げれば、そこに待つのは頬を膨らませ口を尖らせている柚花。
怒るというよりは駄々をこねる子供の様に感じるも、何故か責められている視線を受ける男性はまた動揺の渦に飲まれてしまう。

そうなってしまえばあとは小悪魔の人形と化すだけ。
”ぷんすか“と怒る様はどう見ても可愛らしいのに抵抗は無駄だと悟ってしまう。
もうここまで来たら男性も身を委ねる覚悟を決めるしかなかった。

だからと言って…………

重ねていた手のひらをズラしながら柚花が男性の手を包むように握らせていく。
親指も、人差し指も、薬指も、そして小指も。
でも残された指が1本。
中指だけはハンカチに覆われた状態でピンッと真っ直ぐに伸びていた。

この状態で柚花は何をしようとしているのか?
それがわかるからそこ男性は焦る声を挙げていた。

焦るのは私も同じ。
中指だけを伸ばしているということは、柚花はあの指を入れるつもりでいる。
確かにハンカチで包まれてはいるし、秘部に他の男の指が入るのは初めてではない。
それでも何処の誰かもわからない男の指を。
しかも痴漢に”入れられた”時とは違い今回は柚花が自ら導いて“入れる”事になる。

後ろにいる男達からは見えないカウンタードアの向こう側で、柚花が今一度伸ばしたままの男性の指をハンカチの上から強く握る。
男性に「指を曲げてはいけない」と言い聞かせるため。
今度こそ逃げずに柚花のいう通りにするようにと。


中指だけが伸びた男性の手を自分の下腹部に近付ける柚花。
それに合わせ私から見えるアングルを変えるため、手に持つスマホの位置も変えてしまう。

先ほどまでの上から見下ろすアングルとは違い今度は柚花の正面から。
私のスマホには男性の手の向こうに何も穿いていない下半身と無垢な割れ目の始まりが映っている。
男性の指には恥液で濡れるハンカチがかかったまま。
ゴワ付くハンカチでは入りにくいのではと思ったが、たぶん柚花の秘部はそんなハンカチでさえも難なく飲み込めるほど熟した様に柔らかく、そして抵抗がなくなるほど粘度の高い恥液で満ちているのだろう。

そんな柚花の秘部に。
もちろん男性からはカウンタードアが邪魔をして柚花の下腹部を見ることが出来ない。
だから狙いを定めるのは柚花。
男性の手首を掴み指先が入り口を捉えるよう自らの腰を動かし位置を調整する。

(本当に入れるつもりだ)

ここまでの現実を見続けていても、私は心の片隅でいつかは止まると思っていた。
私の心を嫉妬で苦しめることで柚花の満足が得られれば、このイジワルも終わるものだと信じていた。
それなのに──いや、だからこそ柚花は止まらない。
私が心に安心を抱いている限り柚花はその向う側……安心が絶望に変わる様を求めて自らの身体を欲望の闇に捧げてしまう。
でもそんなことを言ったら底が無いのでは?
いくら私が限度を想定したとしても柚花は想定を越える事に更なるスリルを求めてしまう。
だからと言って私が柚花でも越えられないような限度を想定してしまったら、それこそリミッターが外れたように何処までも2人は堕ちてしまう。
越える限度は徐々に高くなっているものの今はまだ致命的な状況には陥っていない。
でも、このまま欲望の闇に堕ちていけば必ず後戻り出来ない深層にまで行き着いてしまう。
そうなる前に……一体誰が私と柚花を止めてくれるのか?
柚花の身体が子宮がそして心が私の手から奪われ、誰かの「物」になってしまう前に誰がこの遊びを終わりにしてくれるのか?

その答えが出ないまま柚花はまた限度の向う側へ一歩足を踏み入れる。
伸びたままの男性の中指は今にも柚花の秘部に触れようとしている。
それなのに柚花は掴んだ男性の手をゆっくりと持ち上げ、その「手」を自分の股下に……密着させてしまった。

伸びていた指。
密着する男性の手。
では男性の中指は何処に消えたのか?
わかりきっているはずなのに私の精神が悲鳴を上げる。

私だけの柚花の身体の中に。
女性として最も守らなければならない場所に。

……いや、これまで私を苦しめてきたそれらの言葉。
目にする結果は同じだがその表現は大きく異なる。
今の現実を言葉にするならば……

私だけの柚花の身体の“はずなのに”
女性として最も守られる“はずの場所なのに”

「自ら男性の中指を根元まで咥え込み、快楽を満たして貰おうと媚びるように男性の中指へと絡み付く」

スマホに映る柚花は内ももで男性の手のひらを挟み込み内股になりながらも必死に耐えていた。
たとえ暴走してしまったとしても最後の一線──逝くことだけは愛する私の為に耐えようと。
その証拠に男性を導いたのは手のひらを股下に密着させるまで。
誰彼構わず快楽を求めるのならば、自分で男性の手を動かし秘部に突き刺した中指を抜き差しすることも出来ない訳ではない。

それでも欲望の誘惑に堕ちず踏み留まっているのは、せめてもの私への貞操。
スリルと興奮だけではなく、理性までも快楽の欲求に負けたのでは私に示しがつかなくなる。
今は痴漢の時と違い望まぬ絶頂ではないのだから。


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