(あれが?)

斜め後ろからの角度のため全てが見えた訳ではない。
それでも他の2人とは明らかに違っている点……それは、まだ立ちが8割程度だということ。
それに2人と異なり斜め下を向いている。

それなのに柚花は何に惹かれているというのか?
もし立ちの悪さに不憫さを抱いているならば、慈愛に溢れた天使の顔か愛護するようなお姉さんモードの眼差しを見せるはず。
だが、柚花の今の表情は…………完全なる雌の顔。
下を向く陰茎に欲情を昂らせている。

「ぁぁ……」

躊躇いながらも心焦がれる陰茎に近付く手のひら。
両脇の2人には無い余裕を見せる大人の色気に魅了されているというのか。
明らかに柚花が新堂さんを欲している。
私以外の陰茎に子宮を疼かせている。
そう思わせる程に蕩けてしまった潤む瞳。
昂りすぎた欲情が色となる吐息。

そして…………

(本当に触るつもりか)

柚花の手が迷いながらも確実に近付いている。
理性が抵抗を試みるも陰茎の魅惑に抗えない。

繋いで歩いた柚花の手が。
気持ちを確かめ合うように握り合った手が。
私の顔を優しく包んでくれた手が

他の男のものに……触れてしまった。


「ハァ、ハァ……んん…………ぁ……」

柚花の可憐な手のひらが新堂さんの陰茎を優しく包む。
男の悦ぶツボを刺激し自らの意思で固さを与える。

それは何のためか?
柚花は何を望んで他の男の陰茎に快楽を与えているのか?

気付くと柚花の左手がモゾモゾと動いていた。
いつの間にか恥丘の奥に指が潜り込み飲み込むディルドを押し込んでいた。

「ああ……ダメ…………このままじゃ…………」

握る陰茎。
膣に埋まるディルド。
2つの男根が妄想の中で混ざり合い、柚花の心は新堂さんのもので
満たされる。

この状況は非常に危ない。
あまりの興奮に我を失っている柚花。
これが横の2人の陰茎に魅了されたのならまだましだった。
それはあくまで視覚的な興奮で理性が弱まっただけだから。

しかし新堂さんの陰茎は違う。
鈴沢くんの様にいきり立ってもいなければ、五十嵐くんの様に狂暴でもない。
大きさは私とそれほど大差はなく、まだ私の方が活力がある。

それなのに柚花は……
手に握る陰茎から視線を逸らさないその顔は、うっとりと恋に堕ちている。
視覚ではないもっと深いレベル。
頭ではなく心に触れる様な近さで新堂さんを感じてしまっている。

このままでは柚花の心が奪われてしまう。
スリルではなく本当の終りを迎えてしまう。

だから…………

「柚花さん」

新堂さんが優しく柚花へ声をかけた。
柚花を現実の世界へ引き戻すため。
これはあくまでもスリルを楽しむ遊びだと教えるために。

「あ…………か、囲むのはこれで、いいのかな?」

「はい。そうですね」

新堂さんから教えられてしまった。
この世界のルールを。
たとえ行き着く先が同じだとしても、ただ快楽や欲望に飲まれてしまってはならないと。
これはあくまで私と柚花の愛の形。
だから互いの意志が伴わない行為は許されない。

あのままならば柚花だけでなく私まで欲望に駆られ目前の興奮に飲み込まれていただろう。
そうであれば新堂さん達は柚花の身体を楽しめたはず。
それなのに私達を止めてくれた。
彼らにとっては当たり前の事なのかもしれないが、ルールを弁えたその様に私は彼らに対する信頼を高めていた。


「それで…………あとは残りの人達に、その…………犯されちゃうの……かな?」

「そうですね。あとは連続で」

柚花も言葉には出さないが止めてくれた新堂さんに対し感謝をしているようだった。
それと同時に自らの行動に反省もしたことで少しテンションが下がってしまう。
結果として最後は盛り上がりに欠けてしまったが、これも勉強になったと思えば残念ではない。

この後は楠木葵が残りの15人に連続で中出しされるらしかった。
いくら何でも柚花にそんな事が出来る訳もなく、取り敢えずこの場は一旦終り。
私も柚花も現実の世界へと目覚めようとしていた。


「流石に最後までは無理でも、折角なので我々一人一人と代わる代わる温泉に入るのはいかがですか?」

「えっ?」

もう終わったと思っていた私と柚花に新堂さんが話しかけてきた。
前半の言葉は柚花の顔を見て。
そして後半の言葉は私の目を見ながら。

安堵を覚えた私の鼓動が跳ね上がる。
無警戒な心にドロッと濃密な闇が流れ込む。

これは危ない。
新堂さんの声と視線に私の本能が警戒音を鳴らしている。
この感覚は何なのだろう。
低く落ち着きのある声。
優しく受け止めてくれるような視線。
つい心を許してしまいそうになるが、その都度私の心は危険を察知する。

私の本能が訴える新堂さんの本性。
それは圧倒的に強大な雄の力。
陰茎の形や大きさなどの表面的な強さではなく、対峙する者へ絶望を抱かせる雄としての深さ、そして濃さ。

新堂さんはその威圧的な本性を敢えて私と柚花へ向けた。
しかもわざと。

私達に優しさを見せておきながら、最後に私を絶望の中へと落としてみせた。
お前は俺に敵わないと。
お前の女は俺の「物」なのだと。

私の心が恐怖で固まっている。
鼓動は暴れるほど速いのに体は凍えるほどに冷たくなっている。

わかっている。
これも遊びの一環なのだと。
新堂さんが本気で柚花を奪うわけではない。
それにしてもショックが大きい。
柚花を守るべき私が本物の雄の前ではこれ程までに無力なのか。
もしも新堂さんが本気になれば柚花は新堂さんの「物」になってしまう。
しかも簡単に。

そんな男性とこのまま遊びを続けても大丈夫なのか?
今回は新堂さんも本気を出してはいない。
だから私が拒否する猶予を残している。
でも、それと同時に私の覚悟を試されている。
お前はこのまま堕ちる気があるのか?と。

私に突き付けられた選択。
問われているのは責任と覚悟。
新堂さんが支配するこの空間において柚花は私の「所有物」でしかない。
女性に対し礼儀として紳士的に接したとしても、この空間での柚花は男達にとっての「物」でしか。
だから「所有者」である私に問いている。
この空間の強者に所有物を捧げる覚悟はあるのか?と。


じ~っと私を見詰める柚花。
その表情に浮かぶのは、自分がどうなってしまうかの不安ではなく、判断に迷う私への心配。

曖昧ではあったが、今日は何処まで踏み込むのか先ほど柚花と確認をしていた。
そして彼らも柚花の拒否することに対し無理強いをすることは無いため、今日この場で柚花の身が望まぬ危険に襲われることは考えられない。

だが…………

今日、この場はスリルと興奮を楽しんだとして、果たしてそれで満足できるのだろうか?
また別の日、別の機会に彼らと出会ってしまったら?
いや、きっと出会う。
間違いなくこの後連絡先を交換することになる。
1度捕まってしまった闇からはそう簡単には逃れられない。
私と柚花の運命は必ず何処かで彼らの運命と交差してしまう。
そしてその時は…………


その闇から逃れるチャンスは今しかない。
今を逃せば次こそ新堂さんは柚花を本気で落としにかかる。
果たしてその時、柚花は欲情に抗えるのか?
そんな事が出来るのか?

柚花の瞳を今一度見詰める。
その奥の柚花の気持ちを確認するように。
柚花は私だけの愛する「者」。
誰に渡すことも許されない。

だから私は…………


「ユズ…………一緒に入ってもらったら……」

「え、あ…………はい」

柚花が「うん」でも「いいよ」でもなく「はい」と答えた。
この空間での自分の立場を柚花もわかっている。
自分が私の恋人ではなく、私から彼らへ捧げられる「物」であることを。


*****

「え~!? 本当に連続なの? そんなの無理だよ~」

「いや、柚花さんが同じことをする訳ではないので」

「ウフフ♪ してみたい?」

重くなりかけた空気を変える「まぁ、出来ることを楽しくやりましょう」という新堂さんの言葉で柚花が元気を取り戻した。
そして改めて鈴沢くんをからかうようにお姉さんぶっている。


「でも、一緒に湯船に入るとしてもどうしよう。
その……あの……ねっ…………媚薬が効いててスゴく、その……」

これまで以上に顔を真っ赤に染めて柚花がウジウジしている。

「大丈夫ですか?」

「大丈夫なんだけど、大丈夫じゃないと言うか…………
だから……いっぱい……ほら、えっと…………濡れちゃってるから……ね」

「湯船に入ってしまうと?」

「うん。お湯を汚しちゃまずい……でしょ?」

「それならあっちの小さな湯船はどうですか?」

「あっち?」

会話を鈴沢くんから引き継いだ五十嵐くんが指差すのは、先ほど柚花が涼んでいた岩の向こう。
アパートの浴槽と同じくらいの湯船がいくつか見える。

「湯船は小さいですけど、ここは掛け流しだから朝までには中のお湯も入れ替わるので。
ただ、小さいので身体が密着してしまいますが」

柚花がチラッと私を見た。
それはほんの一瞬。
でも、それで十分。
私の顔に動揺は浮かんでいないから。

「お湯を汚さないためには仕方がないかな。
それとも私と密着するのはイヤですか?」

(わざとだ)

ドキリとするほどの柚花の瞳。
上目遣いの潤む視線は簡単にどの男性も殺してしまう。

「そ、そんなこと。とても光栄ですよ」

「よかった♪ それで私はどうしたらいいですか?」

柚花の言葉を受け、今度は五十嵐くんがチラッと私を見た。
当然ながら彼の意図がわからない私は何の反応も見せることが出来ない。
「何故、彼は?」と思う間も無く五十嵐くんが柚花へと手を差し伸ばす。
そしてまるでダンスにでも誘うように頭を下げると、紳士的な誠実さを輝かせながら柚花へ声をかけた。

「まずはあちらへ行きましょう」と。

柚花の中に一瞬の躊躇が生まれた。
五十嵐くんの手を取り岩の向こうへ移動するのは問題ない。

ただ……

今は女の子座りのまま。
勢いで晒してしまった胸も隠してはいない。
でも離してしまったタオルは未だ下腹部に留まっている。
だから無垢な割れ目は見られていない。

そうであれば再びタオルで隠すだけ。
五十嵐くんの手を取り立ち上がる前に身体の前をタオルで隠せばこれ以上見られることはない。

だからこそ柚花の心に迷いが生まれた。
「それでドキドキするのかな?」と。
ここまで来れば裸も同じ。
そしてここは混浴露天風呂。
しかも手を差し伸べる五十嵐くんは、先ほど柚花の隣に立った時のまま何処も隠してはいない。

それならばと……
柚花の動きはごくごく自然だった。
そこに意を感じさせない流れるような動作。

差し出された五十嵐くんの手に視線を送り笑みを浮かべる。
トキメキと乙女の恥じらいを抱きながら差し出された手に右手を重ねる。
そして空いた左手で下腹部に乗せていたタオルをそっと床に置くと……
彼の力を借りながらすぅっと音もなく立ち上がった。

右手は五十嵐くんと繋がり左手は身体の横に下ろしたまま。
ため息が出る程の美しい裸体は、隠すことなくウブな乳房も背徳感を抱かせる無毛の割れ目も見えたまま。

「…………」

これ迄も何度かあったが、美しすぎる柚花の裸は時としてあまりの神々しさに汚れた欲望を浄化してしまう。
その場を清純な空気で満たし牙を向ける雄から狂気を抜いてしまう。

それは柚花自身もわかっている事。
柚花はあえて水面を静めた上で新たな欲望の滴を落とす。
男達の心をより奮わせる為に。


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