「それにしても変なのに目をつけられちゃったね」

帰宅しシャワーを済ませ一息つく。
柚花との会話は自然と大沼の話題に移っていた。

「練習の時、車に乗せてもらったりしたからその気になっちゃったのかな?」

「それは違うよ。柚花を狙っていたからこそ車に乗せたんだし元々そういう人間なんだよ」

「そうだね。でも気を付けないとな。突然襲われても困るし」

「流石に連れ去ったり家に押し入ったりはしないだろうけど2人きりにならないようにはしないとね」

狂気を当てられ恐怖を覚えるのは当然だった。
それは柚花も同じ──いや、身体を狙われる柚花は私以上の恐怖に襲われているに違いない。

だが……
心の何処か。
自分でも認識できない奥深く。
恐怖と同時に微かな疼きを感じてしまったのも嘘ではなかった。
だからなのか……

「うん。じゃないと犯されちゃいそう」

心の疼きを言葉にしてしまう柚花。
些細な言葉はスイッチとなり抱く恐怖をスリルへと変えていく。

「柚花の力じゃ大沼さんに抵抗出来ないだろうし」

「そしたら私どうなっちゃうの?」

柚花の瞳が蕩け始める。
描き始めた妄想に身体が反応を見せてしまう。

「力ずくで押さえ付けられるだろうね」

「そうして?」

「無理矢理入れられちゃうかな」

「無理矢理?」

「うん。それと乱暴に」

「その時ハルくんは?」

「知らずに他のところにいるか、もしくは大沼さんに負けて柚花の横に倒れているかも」

「私はハルくんの隣で犯される……の?」

今、間違いなく柚花の身体がぶるっと震えた。
柚花の中でリアルな妄想が広がっていく。

「それだと誰も私を助けてくれないよ」

「そうなるね」

「でもそれじゃ大沼さんは最後まで」

「まぁ襲うくらいだからゴムなんて着けないだろうし」

「そしたら最後は……」

「というか1回で済めばいいけどそうはならないだろうね」

「………………むぅ」

「どうしたの?」

何故か柚花が怒り出した。
本気ではなく可愛い怒り方だが。

「………………」

「もしかして柚花を助けられなかった事を怒ってる?
でも今のはあくまで想像の話だし」

「……違う」

「えっ?」

「違うの。そんなんで怒ってるんじゃないのっ!」

「じゃぁ何で?」

「ハルくんが変なことを言うから」

「ん?」

「ハルくんが変な想像をさせるから…………エッチしたくなっちゃったのっ!」

「そんな」

「ムラムラなんだよ。どうしてくれるの?」

「どうしてって言われても今は……」

「そうだよ。まだ生理中だからセックスは出来ないのに」

「それなら我慢するしか」

「やだっ!」

「でも他にどうやって?」

「…………私の願望を叶えてくれる?」

「願望?」

「恥ずかしいから言いたくないけど……試したいことがあるの」

良くわからない会話の展開から何故か柚花の性欲を解消する事になってしまった。
帰ってきた時はもう少し深刻な問題を抱えていたはずなのにどうしてこうなったのだろうか?

「それで俺は何をすればいいの?」

「…………恥ずかしい」

「は?」

「……恥ずかしくて言えない」

「でも言わないと何も出来ないよ?」

「んんんっ! ………………咥えさせて」

「それが柚花の願望なの?」

「……奥まで……無理矢理……乱暴に」

消え入りそうな柚花の告白。
自分の性癖を晒しながら羞恥に悶えている。

「それはこの前の温泉の時みたいに?」

あの温泉で鈴沢くんにしたことを柚花は私に話してくれていた。
あれが柚花の願望ならば今回も同じようにすれば。

「違う」

呆気なく私の予想は否定されてしまう。

「えっと~。それならどうやって?」

「待ってて。今準備するから」

そう言って柚花は上半身だけ裸になるとベッドの上にちょこんと座ってしまった。
未だ何をすれば良いのかわからずにいると柚花が頬を桜色に染めながら言葉を続ける。

「ハルくんは下を全部脱いで」

言われた通りに全部脱ぐ。

「そしたらここに立って」

言われたのはベッドの手前。
私はベッドに乗らないらしい。

「それで?」

「私が横になるから乱暴に使って下さい。
遠慮せずに咽の奥まで壊すように。
そしてハルくんが逝きそうになったら私の……その……乳首を……両方とも思い切りつねり上げて下さい」

何故か敬語になる柚花。
言われたことは理解しつつも座る柚花を前に実際の行動がイメージ出来ない。

「どうなるかはわからないけど試してみたいから」

あまりの恥ずかしさに顔を伏せたまま柚花が動き出した。
ベッドの上で仰向けになると私の方へ頭を向ける。

下半身は部屋着を穿いたまま胸を晒け出す柚花はどうも生々しい。
横になっても形の崩れない膨らみはぷっくりとした蕾がツンッと上を向いている。
私が柚花の上に覆い被さるのかと思っていると柚花がズルズルと動き出した。
ベッドの手前に立つ私の方へ。
そして頭がベッドからはみ出してしまうまで。

「このまま私を……乱暴に壊して……下さい」

仰向けで横になる柚花の頭だけがベッドからはみ出ている状態。
当然重い頭を支え続ける事は出来るはずなく──元から支える気は無いようだが──ガクンと頭頂部が下を向いている。

柚花の顔が逆さに見える。
頭に血が登ってしまわないのだろうか?
しかもこの状態だと口内から咽奥までが一直線になっている。
私が陰茎を突き入れたら咽奥まで貫通してしまう。
そして陰茎が咽を塞ぎ柚花の呼吸を止めてしまう。

「それじゃ、入れるよ」

「はい。遠慮なく使って下さい。
そして躊躇せずに奥で出して下さい」

頭に血が登り顔を真っ赤に染めた柚花が覚悟を決めてお願いしてきた。
だから私も柚花の期待に答えるため覚悟を決める。
手加減なく乱暴に道具として。

「ぁが……んぐ……ごご……ぐぐぐ」

かきゅ かきゅ ぬちゃ ぐちゅ

これ迄に聞いたことの無い柚花の呻き。
突き立てた陰茎は正に咽の中ほどまで届いているよう。
その証拠に私の腰の動きに合わせ顎から咽にかけて陰茎の形そのままに不自然な盛り上がりを見せている。
これ迄に無い感覚。
咽の入り口が陰茎の先をキツく締め付け私を射精へと導いていく。

そして想定外なのが私の感情。
顔に股間を打ち付け柚花の咽奥を犯す感覚は私の破壊的衝動を急き立てる。
この道具をメチャクチャに壊してしまえと私の暴力的な感情が頭の中で騒ぎ立てる。

「んご……んが……ぉごぉご……ぐご……ぁが……」

ぬきゅ ぬきゅ ぐきゅ かきゅ

もうそれは只の肉壺だった。
陰茎を締め付け射精を補助する道具でしかない。

「んが……んご……んご……ぐご……」

ぐきゅ ぐちゅ ぬちゅ ぬきゅ ぐちゅ

人の発する声とは思えない音と共に濡れた肉壺に陰茎を突き立てる粘度の高い水音が響く。

「ぁが……ぁが……んぐんぐぐ……」

段々と自分がわからなくなっていく。
今、私が陰茎を突き立てているのは最愛の人。
その人が苦しみで悶えているのに腰の動きを止められない。
この咽を犯し続けたいという暴力的衝動が抑えきれない。

高揚する精神。
限界に達する射精欲。
このまま咽奥に。
この道具を壊してもなお奥の奥へ陰茎を突き入れながら。

「んぐ……ぁが……ぐぐ……んんぐ……」

「はぁ、はぁ、もう出るよ」

既に肉壺と化してしまい私の言葉が聞こえているのかわからない柚花に向かって私は射精を宣言する。
そして柚花の望み通り、ぷっくりと勃起しきった乳首を摘み射精と同時に躊躇ない力で潰しながら捻り上げた。

「あがが…………んご……ぐぐっ…………」

窒息しかけの意識。
胸に与えられる激痛。
容赦なく体内に直接注がれる精液。

柚花の身体が大きく海老反りに跳ねビクンッビクンッと痙攣を繰り返す。

「んがっ……ぁぁぁぁ…………」

私の陰茎を柚花の咽から抜いた時“ぐぼっ”と音がしたような錯覚に見舞われた。
そして私に壊されてしまった柚花はというと…………なんとも悲惨な状況になっていた。

「だ、大丈夫?」

「…………」

返事は無いが呼吸で胸が上下し口元が微かに動いているため意識はありそうだった。
しかし逆さになっていた上、私に咽を塞がれていた顔は窒息寸前の様に赤くなっている。
そして涙でぐしゃぐしゃになっている瞳は未だに焦点が合わず虚ろに空を彷徨っていた。

取り敢えず登った血流を戻すため力の抜けた柚花を何とか抱き上げ頭をベッドの上に戻す。
そして急いでタオルをお湯で濡らし涙や唾液そして私の精液で汚れた顔を綺麗に拭いていく。

「ぁぁ……ごほっごほっ……ありがと……」

頭を戻したことで意識も覚醒し始めたのか、やっと柚花が人としての反応を取り戻してくれた。
私が労るように頭を優しく撫でると柚花は幸せそうな笑みを浮かべ安心したように瞳を閉じた。


***

「あれは禁断の行為だね」

これが起き上がれるまでに回復した柚花の感想。
苦痛を凌駕した先には幸福が待ち受けていたらしい。
しかしそれは悪魔の果実。
一度癖にしまえば麻薬のように精神を蝕み自虐欲求を抑えられなくなりそうだと。
だから当分の間は封印するらしい。
人として壊れてしまわぬ様に。
それほど危険で恐怖すら覚えるほど精神的な快楽は凄まじかっという事だった。


そしてこの危険な行為の根源でもある大沼の問題はというと。
大沼の取り巻きが練習に協力してくれたこともあり柚花とペアを組んで出場したミックスダブルスの部では見事優勝をしてしまった。
これで数ヵ月後に行われる地方ブロック代表戦へ出場権を得ることが出来た。

なお肝心の大沼は利き腕に包帯を巻いて試合会場に現れ他のメンバーと一緒に仲間の応援を熱心にしていた。
そして柚花と私へは迷惑をかけたことを謝っていたが、あの柚花へ向けていた粘るような陰湿な視線は危険な域に達しているようだった。


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